リトリート・インラインディフェンスの欠点
クロスを上げるクドゥスに対峙するニューカッスルの左SBホールのディフェンス方法はリトリート・インラインディフェンス。
リトリート・インライディフェンスとは後退しながらボールホルダーとゴールの間(インライン)を守るディフェンス方法ですが、このディフェンスの最大の欠点はボールホルダーの利き足を抑えられない点にあります。

特にこのシーンではボールホルダーのクドゥスはサイドに対して逆足となる左利きですので、ペナルティエリア横で中を向いた時に繰り出されるクロスがゴール方向へ向かうインカーブのクロスとなり、中でマークするディフェンダーとしては抑えることが難しいクロスとなります。
実際このシーンでも中でロメロをマークするバーンは決してマークを離さずにタイトにつくことができていましたが、ロメロのヘディングを止めることができませんでした。
ゴール方向へ向かうインカーブのクロスへの対応はクロスが向かってくるのに合わせて、ゴール方向へ移動しながらマークをしなければならず、難易度の高いディフェンスをしいられることになります。
自分が抑えるべきマークのインラインとシュートブロックの両立が体勢的に難しく、タイトにつけていたとしてもシュートブロックまで行うことが容易ではありません。
なお、SBの他の選手ではカルバハルもリトリート・インラインディフェンスを徹底して行うタイプのディフェンダーですが、同じく逆足WGが中を向いた際のインカーブクロスを抑えられていない印象があります。
中でハーランをマークするアラバは欧州サッカー界のCBの中でもボールウォッチャー癖がなく、正確なマーキング、ポジショニングの質が高い堅実なディフェンダーでありますが、そのアラバをもってしてもゴール方向に向かうインカーブクロスを迎えながら、マークを行うことが困難であることがお分かりいただけるかと思います。
このような抜かれないことを第一とするインラインディンフェンスは現代サッカーにおいてはよく見られるディフェンス方法でありますが、実際のところこのようにSBがもっともマッチアップすることの多い逆足WGに対して、利き足のクロスを抑えられないという致命的な欠点を抱えています。
なので、冒頭のロメロのゴールシーンはWGを抑えきれなかったSBのホールや中でマークするバーンのミスであったというよりも、このようなディフェンス方法によって想定される失点シーンが再現されてしまったという見方の方がより正確であると言えます。
最適なディンフェス方法
やはりサイドのボールホルダーへの対応も利き足を抑えながらタテに導くワンサイドカットのノーミドルディフェンスが最善の策であると考えられます。
ディフェンスのセオリーはそのチームの戦術や状況を踏まえて、その前提条件のもとにおける最善のセオリーを考える必要がありますが、このサイドにおけるディフェンスにおいてはワンサイドカット、ノーミドルディフェンスはある程度どんな戦術、状況であったとしても普遍的なセオリーであります。
そして、タテへ導くワンサイドカットはタテに行かれて同じくクロスが上げられることまで完全に防ぎ切ることは簡単ではないものの入れられるクロスの質に違いがあります。
逆足WGに対して、中を向かれての利き足のクロスでは、狙いすまし精度が高くゴール方向に向かうインカーブのため、中でマークするディフェンダーにとっても難しい対応のクロスになりますが、対してタテに導いてからのクロスは逆足で出させるため精度が落ちる上に、ストレート系のクロスになるため中でマークするディフェンダーとしてもコースが正確に絞れるため、ゴールに向かうインカーブクロスよりかは格段に抑えることが容易になります。
恐らく正調式のワンサイドカットはもう少しポジショニングがボールホルダーの同程度の高さであり、カットイン方向への進行を防ぐようある程度距離を空けてのマークになるはずです。


サッカーのディフェンスは基本的には受動的であることが多く、全てを防ぐことは難しいため、できる限り攻撃側の可能性が低い方向に追い込む、守備側が優位な方向へ追い込むことが大切です。
なので、ワンサイドカットを行いクロスを上げられた結果として、失点することがあったとしても相手に利き足でのクロスを上げられるよりかは可能性が低い方向に追い込んでの結果となるため、セオリーとしてはベストを尽くしたと言えます。


コメント