それぞれのポジションにはそれぞれ最適な能力をもつ選手が配置されることでそのチームが持つ能力を最大限に発揮することができます。
例えば、CFにはCFに適した背が大きく、フィジカルが強く、そしてヘディングや足元の決定力に優れるストライカータイプの選手が配置され、バイタルエリアをメインにプレーする位置にはドリブルやキープ力に優れ、パスのうまさやミドルも期待できる10番タイプの選手が配置される、といった具合に一般的に定着しているような標準的なロールモデルがそれぞれにあると思います。
本来はそれぞれのポジションに最適な能力をもった選手を的確に配置し、それぞれの役割を忠実にこなすことによって、チームとして最大限に機能を発揮できるはずです。
つまり「標準的な配置&フォーメーション=最適」であると言えますが、実際の試合の中ではさまざまな理由により、ポジションと役割が逆転しまうことがあり、それを「ロール(役割)のねじれ」と定義付けしています。
たとえば、次の図のようにゴール前におけるポジショニングは「CF/受け手-AM/ボールホルダー」が標準的な最適である状態であります。

ところが、CFがバイタルエリアでボールを受けてしまうと「CF/受け手-AM/ボールホルダー」の状態を再現することができなくなってしまいますが、実際に試合を見ているとこのようなケースは頻繁に見られる光景でもあります。
こうなるとAMはCFを追い越すことで、相手に対してのポジショニング面での優位性は維持することはできたとしても、先述の通りの「ロールのねじれ」が発生することになります。
ポジショニングセオリーは実行できていても、ロールと配置の最適性が失われている状態です。

AMが追い越さずにその場に留まれば、CFとともに低い位置で被ることになるために後ろに重く、相対的なポジショニングで優位性を維持することができなくなります。
CFが低い位置で受けることは0トップの動きとして肯定される向きも少なくありませんが、基本的にはCFが低い位置で受けることはまずマイナス面の要素が働き、最適ではない状態に落ちることになります。
CFがサイドに流れる場合でも同様であり、本来背が高く、クロスターゲットとしても足元のシュートでもチームの中でもっとも得点力に優れるCFがサイドに流れることでチームとして最適ではない状態を招くことになってしまいます。
これらの現象を流動的であるとして、肯定的に捉えられることが少なくありませんが基本的には流動的である、ということは標準の最適である状態を崩しているということであり、まずデメリットが発生する、ということが意識されるべきであると思っています。
もちろん、これらはあくまでCFに標準的なストライカータイプの選手を配置するなどの一般的な配置を前提とした場合にポジションが入れ替わってしまうと最適性が失われるということであるので、CFにウイングストライカータイプの選手を配置し、ポジショニングの流動性を前提として設計された配置であれば、それは意図した流動性なので最適性が必ずしも損なわれるということにはなりませんが、そのような標準的ではない配置、システムはそもそもその戦術設定の時点で最善の策ではないということになります。
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